PROJECT STORY サントリー ワールド リサーチセンター(SWR)

設計から現場対応まで一貫した技術的ノウハウで、知が響きあうラボ環境づくりを提案。

サントリーグループとして3カ所に分散していた基礎研究・技術発機能を集結した研究開発拠点が「サントリー ワールド リサーチセンター」(以下、SWR)だ。“新たな価値の創造”に挑むための新拠点コンセプトは、「国境も分野も超えた知と知を響かせ、未知の感動体験を創りだす」ことを意味する「響創」。社内外の知の融合を目指した新拠点建設で、ラボづくりを担ったメンバー3名に今回のプロジェクトを振り返ってもらった。

物件概要 OUTLINE

サントリー ワールド リサーチセンター(SWR)

大阪府と奈良県にまたがる知の集積エリア「関西文化学術研究都市」に建設。敷地の境界に門や塀を設けず、国内はもとより海外にも開かれた研究開発拠点である。周囲の自然と調和した外観は、幾重にも重なる水・緑・土壌を表現している。

  • 所在地:京都府相楽郡精華町精華台8-1-1
  • 工期:2014年5月〜2015年5月
  • 階数:地上4階、搭屋1階

プロジェクトの流れ PROJECT PROCESS

初期提案
2013年4月〜 建築の要件作成に必要な設備設計を、ラボ空間の専門家としてサポート。3社1財団にわたる研究者の多様な要望のヒアリングとソリューション提案を繰り返し、優先順位を整理しつつ、ブラッシュアップを重ねた。
実施設計
2013年9月〜 基本設計を経て実施設計を開始。新シリーズ「ユニエックス ラボ」への機種変更を提案。新機種の特長が顧客に評価されて移行。実機や試作品で詳細までをご確認いただき、満足度の高い環境を具現化。
施工
2015年1月〜 短期間の工期の中で、円滑に設備機器を納入できるよう、各製品の基本的な組立てを工場で済ませ、半完成品にして施設内に搬入。パーツの欠品などのない確実でスムーズな据付や配管接続により、期間内で迅速に作業を完了した。

Phase 01 初期提案フェーズ

ひとつひとつの研究グループにヒアリングを重ね、 設備設計案をブラッシュアップ。

藤井 洋行

ダルトンのラボ環境創造のエキスパートとしての実績が評価され、大手ゼネコンと連携して取り組んだのが、SWR建設プロジェクトである。新拠点コンセプトを検討する段階から参画。サントリーグループ内に結成された9つの課題検討チームの一つである「ラボ課題・レイアウト検討チーム」の社外パートナーを務めた。

藤井「ゼネコン様が建物の要件をまとめていくには、ラボ内に設置する設備機器の情報は欠かせません。SWRでは数多くの実験室があり、各室に必要な設備機器の仕様や台数、配置などのプランを提案いたしました。また、これだけの大規模プロジェクトですから、打ち合わせにあたっては、まず用語の統一から取組みました」

藤井 洋行
株式会社ダルトン
施設機器事業部 ソリューション営業部
ソリューション営業課 係長
藤井 洋行
すべてのプロセスにおいて営業担当としてサポート。大手ゼネコンとの橋渡し役としても力を発揮した。
伊佐 秀巳

伊佐「サントリーグループの3社1財団にわたる研究者の方々は、いくつもの研究グループに分かれていました。そのため、それぞれのグループリーダーの方と個別にお目にかかり、各研究グループで使用する実験室のご要望を伺い、設備機器のリストや設置図面を作成していきました。すべてのグループリーダーの方にお話を伺うと、丸1日を要することもありました。しかも、それは、一度で終わるわけではありません。ユーザー様の視点からできる限り理想に近づき、ユーティリティ配管などの制約もクリアしなければなりません。そのため、研究グループごとにヒアリングとプラン提案を何度も繰り返し、ブラッシュアップを重ねていったのです」

伊佐 秀巳
株式会社ダルトン
施設機器事業部 エンジニアリング統括部
西日本エンジニアリング部 一課 課長 (プロジェクト進行当時、現在は株式会社イトーキに所属)
伊佐 秀巳
主に実施設計までを担当。多様な要望に応えるため、調整を繰り返して設備設計に反映した。
サントリーウエルネス株式会社
健康科学センター
健康科学を探究し、多様な商品を開発
サントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社
安全性科学センター
最先端の評価技術で品質を維持・向上
サントリーグローバル
イノベーションセンター株式会社
バイオ技術などグループ全体の基盤研究を追究
公益財団法人サントリー
生命科学財団
分子生物学などの研究とともに学術研究を支援
SUNTORY
WORLD RESEARCH CENTER

Phase 02 基本・実施設計フェーズ

ワンサントリーとしてのルールの統一化や、 交流促進につながる設備共用化を推進。

ダルトンでは各研究グループにヒアリングを重ね、個別の意向をきめ細かく具現化。その一方で安全管理や実験の正確性の観点から、共通ルールを定めることをサポートしていった。

藤井「ラボに関する法令の認識度は、当初、研究グループによってばらつきがありました。また、安全管理面では研究グループごとに慣習的な独自のルールがありました。そのため、まず薬品管理、廃液処理などについてさまざまな法令内容の情報共有を図りました。そして、サントリーグループ全体として、適切な基本的ルールの統一化ができるようサポートいたしました」

研究グループ全体での取組みという面では、部署や組織を超えた交流の機会を増やし、省スペース化にもつながる設備機器の共用も挙げられる。

伊佐「例えば、一般的に機器分析室と呼ばれる多様な分析装置が置かれる部屋などは、3社1財団での共用が可能なスペースでした。そうした機能別の実験室をはじめ試薬保管庫、ガラス器具などの洗浄室は共用スペースとしてご提案し、ラボとしての効率化はもとより、知の共有や交流につながるよう意識しました」

設備を共用する研究グループごとに薬品管理や廃液処理の方法、洗浄ルールなどが異なっていたら、安全面はもちろん実験結果にまで影響を与えかねない。研究グループで設備機器の共用化が推進できたのは、顧客がワンサントリーの一員として一体感を強くもち、SWRで働く全研究者の意識改革を推進し、基本的な使用方法が統一できたからこそのことである。

部署の壁を超えて共用するオープンラボ(安全面への配慮から構造的には隔離)を主体としたL型の実験エリア、そして開放的なスクエア型の執務エリアで構成。実験エリアと執務エリアを回転させながら4層に積み重ねた構造によって、フロアの上り下りで歩く距離自体は増える。しかし、これは移動中に多くの研究者と偶発的に出会えるよう、考えつくされた仕組みなのである。

より先進的な機能を搭載し、 施設に調和するデザインの新機種へ変更。

2014年4月に各製品の詳細設計などを詰める「実施設計」へ入り、打ち合わせを進める中で、「ユニエックス ラボ」シリーズが新発売となった。そこで、ラボファニチャーの柔軟性やドラフトチャンバーの省エネ性などの面でより先進的な工夫が凝らされた新シリーズへの入れ替えを顧客に提案。洗練されたデザイン性も含めて新シリーズが評価され、急きょ機種変更の運びとなった。想定外だった旧シリーズからの移行は、どのように進めていったのだろうか。

伊佐「旧シリーズを想定して機器リストや設置図面などのプランを進めていましたので、実施設計での機種入れ替えには多くの調整が必要でした。例えば実験台などの場合、旧シリーズと同じ外形寸法にユニットを構成できないケースがあったり、収納スペースが減少するといった課題もありました。そういった課題について、研究者の方々と話し合い、創意工夫をして解決策を見いだしていきました。さらに、お客様をショールームにお招きし、実機はもちろん実験台の試作品も用意して細部までご確認いただきました。それにより、ドラフトチャンバーのコンビネーションサッシの使いやすさなどを実感いただくことができました。また、サントリーグループでユーティリティ別に統一されていたハンドル色への変更などが行われ、最終的には安全面も含めて細やかな精度アップを図ることができたと思います」

藤井「新シリーズへの機種変更については、お客様にもいろいろとお手数をかけてしまいました。でも納品された後、『研究施設全体が美しくコーディネートされて、その印象にマッチするデザインを選んでよかった』とお客様にご評価いただけたことは、営業担当として大変うれしいことです」

大野「新シリーズのデザインに関しては、ホワイトとグレーが基調色なので部屋全体が広く感じられ、開放感があってよいというご意見も伺いました」

他社と共用する見通しのよい「機能別実験室」。実験台の天板上は、収納ボックスや棚などの位置・仕様を工夫し、向かい合う研究者同士のコミュニケーションがしやすいよう配慮されている。
ドラフトチャンバーの選定にあたっては、安全面や用途だけではなく省エネ性能も重視し、低風量タイプが採用された。

Phase 03 施工フェーズ

効率的で緻密な現場対応によって、 より満足度の高いラボ環境創造へ。

大野 和明

SWRは延床面積が23,000㎡を超える大規模な研究施設であるが、全体の工期は約1年間に限られていた。2014年5月に着工され、ダルトンの担当する設備機器の施工は、翌年の1月からのスタートとなった。

大野「竣工予定までの5ヵ月で非常に多くの実験エリアに、多様な設備機器を搬入し、据え付け、ユーティリティの接続なども行わなければなりませんでした。施設内での作業時間を短縮するため、SWRの近くにあるイトーキ京都工場の一角を借り、製品のフレーム組立てなどを済ませ、半完成品として搬入しました。そうした作業効率化によって予定通りのスピードアップができ、期間内に設備機器の設置を完了できました」

大野 和明
株式会社ダルトン
施設機器事業部 エンジニアリング統括部
西日本エンジニアリング部 一課 課長
大野 和明
主に実施設計から施工までを担当。エンジニアリングの視点から多くのソリューションを提案した。

設備機器が短期間での施工になることは、事前の計画でわかっていたため、製品の倉庫管理や配送も含め周到に準備を行った。

大野「今回のように基本設計など早めの段階からお客様と綿密なコミュニケーションをとってプロジェクトが進められれば、細部まで段取りが組めるため、施工段階に入ってから後戻りするようなミスを防ぐことができます。また、私たちの姿勢として重要なのは、初期の段階でお客様が意識していない課題まで細やかなヒアリングで引き出し、より多くのソリューションを見いだすことで、設備機器の配置から各製品のディテールに至るまでに極力反映していくことだと考えています」

SWR建設は3社1財団が集結したビッグプロジェクトだが、ユーザーの立場に立ったヒアリングで潜在的な課題まで早期に把握することの重要性は、施設規模の大小に関わらない。ダルトンでは、顧客の課題をより綿密で体系的に可視化できる新たな調査方法の導入も計画。ラボ空間創造に多様な手法を駆使し、顧客満足度のさらなる向上に取組み続けていく。

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