某社 様納入現場における様々な課題をクリアした設備導入を実現
高薬理活性物質の合成において作業者への曝露防止を目的とした封じ込め装置です。晶析ろ過、乾燥、収容、分析試料調製といった一連の作業をすべて封じ込め環境で実施するため、封じ込めアイソレータ(アイソレータ)とケミカルハザード対策キャビネット(キャビネット)さらには真空乾燥機(乾燥機)をドッキングさせました。
また、単に封じ込め性能を担保するだけでなく、床の耐荷重や搬入経路等、お客様からの様々な設置要件を確実にクリアして導入に至りました。

お客様の課題
この事例でご紹介するお客様は、工場内のラボにて少量多品種の高薬理活性物質の製造プロセス開発を実施しています。これまでの微量な高薬理活性物質の取り扱いは、お客様保有の二次封じ込め設備で対応可能とのことでした。今後の事業進展を見据え、更に高薬理活性を有する物質を少量取り扱うためには設備増強が必至とのご判断で、高い一次封じ込め性能を有する装置導入の検討を開始されました。
作業内容と納入現場に合わせた仕様の検討

装置選定においては、弊社静岡テクノパークでの実機見学で使用イメージを膨らませて頂いた後、作業内容を詳細にヒアリングさせて頂きました。
晶析ろ過、乾燥、収容、分析試料調製といった一連の作業を1台で実現させるため、乾燥機内蔵型アイソレータとキャビネットのドッキング仕様で進めることとなりました。
他社様とのご検討も進められていたようでしたが、お客様が求める仕様を実現可能なカスタマイズ性の高さが評価され、弊社をご選定頂きました。

製作前に仕様の詳細を詰めるため、お客様にはモックアップで実作業をシミュレーションして頂きました。そして、実現へ向けた課題を抽出し、解決へ向けたご提案をさせて頂きました。
まず、キャビネット内での各種作業(加圧ろ過機でのろ過作業や大型容器への秤量及び収容作業など)に当たり、庫内の作業エリア確保(高さ)が必要でした。キャビネットは装置前面サッシの高さで開口流入風速を保ち、高薬理活性物質を庫外へ飛散させない構造となります。従って、作業ポイントエリアが高いとサッシが障壁となり作業性が低下する点が問題でした。
そこで、サッシを上下に分け、さらに上部分をコンビネーション構造とすることで、作業エリアに必要な箇所をスライドさせて開閉し作業が行えるようにしました。
次に、キャビネット内で各操作を安全に実施するために、庫内で使用する機器などを固定するためのポイントが欲しいというご要望がありました。庫内にスタッチーフ及びジャングルを設け、一般ドラフトでの実験作業と同様の作業が実施できるようにしました。
さらに、高薬理活性物を完全封じ込めの状態で真空乾燥させたり、不活性雰囲気下で取り扱ったりしたいとのご要望がありました。アイソレータ内蔵乾燥機をモックアップで再現し、庫内での試料の移動や操作を確認すると共に、用途や想定手順に応じて棚段数等やガスライン等を設計、ご提案させて頂きました。

コンビネーションサッシ


真空乾燥機モックアップ
一方、装置の据付においても色々な課題の解決が必要でした。
既設建屋の上層階へ装置を据え付けるため、クレーンで吊り上げて作業室の窓から搬入する必要がありましたが、窓の大きさが装置の大きさよりはるかに小さいという問題がありました。そこで、各装置を分解して搬入致しました。キャビネットは上下二分割として装置上部を90度寝かせて搬入し、納入場所の作業室内で上体を起こして組み立てました。アイソレータは通常、架台を境にして上下二分割にすることが多いのですが、今回は窓の大きさに合わせて本体を6分割し、納入場所で組立作業を行いました。今回は特殊な搬入方法となったため、搬入用の治具も特別に製作するなど円滑な搬入のために様々な工夫を凝らしました。
また、既設建屋の床の耐荷重よりも装置重量が大きく、分散板の設計が必要でした。床の仕様を確認し、装置の足の位置に適切なサイズの分散板を敷くことで、装置の荷重を『点』から『面』で受けて荷重を分散させることができました。
様々な条件を確実にクリアし封じ込め性能も達成

アイソレータ庫内側の真空乾燥機(左)とパスボックス(右)

キャビネット内側のパスボックス
通常、アイソレータから物品を取り出す際にパスボックスを使用すれば、その内部が汚染され、外側の扉を開放した際に装置外部へ高薬理活性化合物が飛散するリスクが生じます。本装置では、アイソレータとキャビネットをパスボックスで接続し、キャビネット内でパスボックスの扉を開閉できるようにすることで、パスボックスの利便性と化合物漏洩のリスク低減を両立させることとしました。納入時に行った封じ込め測定では、想定されるいくつかの作業の中から最も曝露リスクが高いワーストケースについてシミュレーションを行いました。曝露量の結果はいずれも実績値で許容値以内でした(アイソレータは 0.1μm/㎥ 以下、キャビネットは 1μm/㎥ 以下)。
本案件では上記の通り、数多くの課題を一つ一つ丁寧に解決しました。お客様が求める封じ込め性能を達成するだけではなく、導入にまつわる様々な条件に合わせて工夫を重ね、お客様のご状況にフィットした仕様でご提案ができたと考えております。
この記事で取り上げた製品PRODUCT INFORMATION

封じ込めアイソレータ
高薬理活性物質などの危険物質を取り扱う作業空間を外部環境から隔離し、作業者と外部環境の安全確保と同時に、取扱物質へのコンタミネーションを防止する装置です。
オールカスタマイズ製作となり、お客様の運用に最適な仕様でのご提案が可能となります。
原料の秤量・調製・サンプリングや粉砕、高速攪拌造粒などの粉体加工処理、危険物質を使用した治具の洗浄(失活化)など様々な工程の封じ込めが実現可能です。

ケミカルハザード対策キャビネット
高薬理活性物質を始めとする危険物質の取扱い空間を、外部空間から隔離し、作業者と外部環境安全確保を叶える装置です。
装置前面サッシ開放部からの流入気流により、作業空間を気流制御で封じ込めます。
シュアパックシステム(特許取得済)による安全で簡易なフィルタ交換が可能です。
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