震災体験を活かし、 より安全なラボ環境の実現へ。
事前の地震対策による 最大の成果は、避難経路の確保。
2011 年3 月11 日、東北大学の化学棟にある磯部寛之教授の率いる「有機化学第二研究室」では、マグニチュード9.0 の「東北地方太平洋沖地震」を体験。最大震度7 を記録した本震の強烈な揺れに見舞われながらも、研究室の学生全員が無事に避難できたのは、事前の念入りな地震対策があったからこそといえます。 30 年以内に99%の確率で起きるといわれていた宮城県沖地震に備え、2007 年には化学棟の耐震補強工事を実施し、外壁の開口部を鉄骨ブレースで補強しました。

耐震ラッチ付きの実験台は、ほとんどの引き出しが飛び出さず、避難経路が確保できました。

固定していた画桟が壁から外れ、棚が大きく移動してしまいました。

実験室に立つ、磯部寛之教授。
すべての設備機器が 転倒・移動する前提で最善策を練る。
大きな成果があった一方、新たな課題として見えてきたのは、設備機器の固定方法に改善の余地があることでした。本震のピークの揺れで、背の高い本棚は壁に打ち付けた金具が抜けて前に倒れ、装置用のアングル棚は固定した画桟ごと壁からはがれて約1m も移動しました。 東日本大震災を経験された磯部教授は、すべての設備機器は移動し、倒れる可能性があると仮定して地震対策に取り組むべきことを痛感されました。そのため同研究室では、全員が安全な場所に逃げるまでの間、設備機器が避難経路をふさぐことのないよう、数々の改善策を考案されました。天井近くまで高さのあった不安定な本棚を約半分の高さに変えて倒れづらくし、地震で大きく移動した大型の試薬棚は床に金具でしっかりと固定。強烈な揺れに対しても設備機器の転倒や移動を極力防ぐことで、より確実に全員の避難経路が確保できるよう改善されました。 そうした人命に関わる安全性の向上は、あらゆるラボで何よりも優先されるべき永遠の課題といえるでしょう。
本棚


実験台


ドラフトチャンバー


試薬棚


装置用アングル棚


ガスボンベ台

